ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.1
〜 虹色の青春 〜






虹色って聞いて、何を思い浮かべますか?

おそらく、多くの人は「連荘確定!」というのを思い浮かべる事でしょう。そしてそれはある意味正解です。


しかし、ある特定の属性の方は、この作品を思い浮かべるのでしょうか?


とにもかくにも、ときメモを大作たらしめたと思われる作品、それがこの「ドラマシリーズ 虹色の青春」です。


このドラマシリーズというのは、ともすれば表面的な行動のみをひたすら繰り返すだけの単調な、 またテーマそのものを見失いがちな「ときめきメモリアル」(以下“本編”)にあって、実はこれらハッピーエンドの 中にはこんなに奥の深い物語が隠されているんですよ、というものを見せてくれるものです。

本編がいろんな選択肢の中から自分好みのルートを選びつつ、ゲームとして楽しむのに対し、これら「ドラマシリーズ」 はアドベンチャーゲームというよりもむしろ「アドベンチャーノベル」といった感じでしょうか。
特定のヒロインに絞り込んだ物語であり、尚且つそのヒロインと主人公の馴れ初めを描いた作品です。
よって、(ハッピー、バッド各エンドはありますが)物語は基本的に一本道となっています。

さて、今作品は、本編のヒロイン中、女帝を抜いて人気ナンバーワンになった「虹野 沙希」です。
ここでの虹野さんはサッカー部のマネージャー。優しく、気さくで、人気者であるのは本編に同じです。
対する主人公は、サッカー部員。2年になるが、いまだ補欠のまま。いつしかレギュラーになることを夢見て 努力を続ける、ちょっとネガティブな男です。

このサッカー部では、2年の春の時点で、対校試合のレギュラーメンバーになっていないと、今後レギュラーメンバー としては出場できないのが通例となっていました。
現実の、通常の運動部ではどうなのかは不明ですが、この後能力が開花したとしてどんなに上手になったとしても、 第一線には出られない。ある意味実力主義といってしまえばそれまでなんですが、見方を変えれば人材を上手く 活用できない部ともいえますね。
思うに、このサッカー部の顧問は、部活動本来の意義を見失っているのでしょうか。現在の多くの部活動がそうである ように、栄誉だけを追い求める風潮が強いようにも思えます。

それはさておき、主人公はそこそこの実力は持っていました。高校からサッカーを始めた事を踏まえれば、その能力の 伸び具合は驚異的といっても過言では無いでしょう。それが肌で感じられていた虹野さんだからこそ、レギュラー発表の日 までは主人公に対して「大丈夫よ」と言えたのでしょう。

しかし、主人公はレギュラーにはなれなかった。

他にこれといって取柄の無い主人公にとって、運動能力の高さだけが唯一の自慢だったのですが、それは残酷にも打ち砕かれた 結果となってしまいます。
ただ、世の中にはそんなものザラに転がっている話ですよね、むしろ何の障害もなくとんとん拍子で陽の当る場所に 出られる人のほうが圧倒的に少ないわけで、だからこそ努力の結果が報われる話は「美談」として語られるのだと 思いますけどね。
話を元に戻しますが、主人公は大きな挫折感に打ちのめされる結果となりました。
それは、プライドが劣等感に転化するには充分な出来事だった事でしょう。

もはやレギュラーになれる確率はきわめて「無し」に近い状況になった。
けれども、主人公はそこで止まる事はありませんでした。

日課となっているボール磨きも、夜間の自主錬も続けます。
結果はどうなるかなんてわかりません。レギュラーになれない事も(この時点で)甘受したと思います。
けれども、サッカーを続けることに戸惑いはなかったのか、あるいは生真面目なのかは定かではありませんが 努力を続ける主人公。

ともすればそれは、また違う見方で捉えられることも事実で、その顕著なものが「秋穂 みのり」の台詞に 表されています。

ボール磨きなんて、点数かせぎ

真相は違っていても、経緯を踏まえればそう捉えられてしまうのも仕方が無いのでしょうかね。
けっしてみのりちゃんも、本心からそう言い放ったわけでは無いのでしょうが、でもどこかでそう 感じていたのでしょうね。それは虹野さんも同じで。

虹野さんは主人公をサッカー部に誘った張本人です。毎日部活で頑張る主人公を見てきました。
でも、その全てが見えていたわけでは無いのでしょうね。

レギュラー選考漏れ後に、自主錬をする主人公をはじめて見ました。
それから、これまで以上に主人公を励ます事になるのですが・・・


本編での虹野さんとはやや違った印象を受ける今作品での彼女ですが、一言でいえば「過保護」ともいえる 主人公への態度はやや「?」かな、と。
部活の事は別としても、何を言っても怒らない、何があっても主人公を励ます姿は、ある種主人公を 調子づかせるだけの接し方とも言えなくもありません。

だからというわけでは無いですが、後半において二人が気まずくなるのは主人公は虹野さんに対して 「甘えすぎ」ていた結果なんだとも思います。

信頼しあえない状況を作ってしまったのはなにも虹野さんのせいだけではなかったのは確かですが、しかし 主人公を増長させてしまったのも彼女でした。
劣等感は知らず知らずのうちに、主人公のなかで彼女に対する「不信感」に繋がってしまっていたのでしょうか。 ただ、彼女に対する「甘え」がなければ、信じられた事も確かでしょうし、それはまるで「駄々っ子」の論理で もありますが、事実でもありえる、と。

ただ、彼女にしてみれば主人公を想うあまりにそういう接し方になっていたのでしょうか、そう考えれば 人の心を全く汲めない主人公だけが悪者になってしまうのですが、それもいささか違っていますしね。

雨のなか主人公を信じて待っていた虹野さんに対して取った主人公の行動は決して褒められることではありません。
原因は何処にあるのかは問題ではなく、やはり他人に対してどれだけ気配りができるかが問題なんですよね。 そこさえ踏まえれば、主人公の態度も変わることなく、虹野さんを泣かす事もなかったでしょうに、ね。

最終的には、努力が実を結ぶ結果に集約しますが、それは「お約束」ともいえますがやはり「美談」として 捉えるほうが良いのでしょうか。
現実にはそんなに都合よくいかない事のほうが大勢ですけれども、「ご都合主義」ともいえる「様式美」を追い求めている この作品においては当然の帰結でもあると思います。

先の展開はおおよそ見当がついてしまうのも、セオリーどおりの物語になっているからともいえるのですが、そんな 作風にあって「泣ける物語」に仕上がっている所は、高評価といって良いでしょうね。

私は高校当時、部活には全く関与していなかったのでそのあたりの雰囲気は全くわかりません。
むしろ、ゴッツイ男ばかりが集う「道場」に通っていたためか、どうもイメージ的に部活というものが見えないんですよ。
そんな私でも充分に「場景」が掴めるのは、作品のつくりが非常に心に沁みてくるからなんでしょうね。

いろいろとまとまらない事を書き連ねましたが、いい作品です。




































背景画は虹野さん
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