ときめきメモリアル2 サブストーリーズ


〜 Memories Ringing On 〜







ときめきメモリアル史上、最悪にして最高の呼び声が高い作品、物語の本筋たる陽ノ下 光、水無月 琴子、 麻生 華澄の3人の関係を明確にすると共に、背景の核心部分を余すところなく表面化させた作品です。

最悪の呼び声が高い、というのは、言わずもがな主人公に起因するものなんですが、もはや確信犯とも 思えるとぼけっぷりを発揮して、メインヒロイン3人を翻弄させ続けます。
それに飽き足らず、親友の純を怒らせ、さらに神経を逆撫でする始末。
笑顔が見えないヒロインたち、常に怒っている親友。荒涼たる雰囲気の中で、主人公は相も変わらず あちこちフラフラとしています。

とまあ、そんな書き方をすると、いかにもどうしようもない作品に思えてきますんで本筋に。
先ほどの雰囲気そのものは、大筋でそのままです。主人公もあくまで客観的な見方からでして、ボケぶりは ともかく、本質は本編とそれほど変化はありません。
ただ、やはりヒロイン3人の笑顔が無いだけで、これほど作品のイメージが暗くなるのかと思ったりもして あの3人の笑顔が、いかに明るく美しく、大切なものだったかを痛感することとなりました。

この作品の特徴として、ときメモ2の全ヒロインの完結エンディングが用意されています。さすが「2」を 総括する作品、と言ったところですが、実はオマケもあったりして。
それは、「1」で絶大な人気(?)を誇ったあの2大巨頭がゲスト出演しており、さらに「告白エンディング」 が用意されています。そのゲストとは「紅い女帝」こと「藤崎 詩織」、そしてコアラ型の髪型の少女「館林  美晴」の2人。この2人のファンにとっては、堪らない内容ではないのでしょうかね。

さて、それでは物語を負っていく事にしましょう。光、水無月さん、華澄さんの順でそれぞれのエピソード ごとに書いていきます。


明るく元気に笑顔を絶やさず、何処までも他人を気遣い優しい光、その光にとって主人公は単なる幼馴染では 無いことは本編でも嫌と言うほど見てきた事実です。
ただ、その事を主人公がどこまで認識していたのかが、この作品における根本的な問題でもあります。

結論から先に言いますと、主人公が光を、それこそ彼女以上に思っていることは疑うべくも無いことであって 、それはエンディングを見るまでもなく彼自身が抱いている「大切な想い」でもある事は2人も(なんとなくは でしょうけれど)解っていたことなんでしょうね。

多くの恋愛のはじめというのは、不安が募るのは皆同じ事だと思うんですよ。特に告白する前ってのは、そ れこそ色々なシチュエーションや結果が浮かんでは消えていくわけですから、不安になるのも当然ですよね。 それは「旅立ちの詩」での舘林さんがそうであったのと同じだと思います。それに、その「不安」には男女の 区別なく備わっている、人間的な感情でもあるでしょう。

私のような「どうしようもない男」であれば、不安よりも先に本能の赴くままに突き進む事も可能ですが、 それ以前にこんな人間性の欠片も無い男に想いを寄せてくれる女性はただの1人もいない事は周知の事実。

話が逸れました。ともかく、2人お互いにその想いを確信できる「決定打」が無いことがさらに話をやや こしくしてもいるんですね。これはぜったいに態度をはっきりさせない主人公に責任があることは事実なんです が、その主人公にしても、あれだけスケベなのにこと「恋愛」に限っては疎い、というか鈍すぎるきらいが あるから余計に始末が悪いんですよね。ようするに悪気が無い分だけ性質が悪い、と。
ただ、そんな主人公の性質を誰よりも理解しているのも、光だったりするんです。まあ、正確には彼女を 始めとして主人公に関わる全ての人がわかっている事でもあるんですが。ただ1人、純を除いて。

確信し得ないままに2人の刻を刻んでゆく主人公と光ですが、それでも主人公は未だに光を信じることが できずにいます。この部分は主人公はつくづく普通に「男」なんだなとも思える部分ですが、逆にこのバカ は3年間、幼少期を含めればそれ以上の年月、一体光の何を見てきたんだ?と怒りさえ覚える部分でもあり ます。
これまでの彼女の言動を鑑みれば、しなくていい誤解なぞ生じなかったはずですよね。あれだけ鈍い主人公 が、あの匠との一件において ジェスチャー ジェラシーを抱くとも思えないですし、たんなる独占欲の 裏返し、というのもどこか説得力に欠けるというか、ね。

思わず抱きしめたくなるほどいじらしい光の行動に、主人公はどれ程報いれるのかは、もちろん主人公次第 なんですけれど、無事告白できたとしてもあの主人公では、人間的にもっと大きく成長しないと、あの眩しい ばかりの光の笑顔は二度と見られないのではないか、と心配になってきます。

エンディングで光は「とっても幸せだよっ!」と笑顔でのろけましたが、あの笑顔がさらに輝きを取り戻す ことを願わずにいられない、そんな感想ばかりがよぎる内容でした。
この作品での光、物凄く悲しい笑顔を見せます。この辺りが作品評価を下げているのは間違いないと断言できます。 が、エンディングはそれ以上にほっとします。
いやあ、浮き沈みの激しいシナリオでした。
親友と恋愛と、どっちを取る?
そう訊ねる水無月さんの本心は、一体どっちなんでしょうか?

誰の目にも1番の親友に映る光と水無月さん、でもその実は、「ライバル」といえる間柄でもありました。
恋愛に関してはその限りではなかったとは思いますが、何かにつけてライバル視していた事は、他ならぬ水無月さん 自身が打ち明けてくれました。
でも、それでもうまくバランスが取れていて、お互いが本気で優しい娘だったからこそ、親友としてやってこれた んだと思います。
逆にいえば、そのためにあそこまで悩み、悲しまなくてはならなかったのも、必然なんでしょうか。
伝えられない想い。
伝えてはいけない想い。
決壊寸前の感情は、ちょっとしたきっかけで濁流となって流れると思いました。でも、そうでは無かった。
彼女自身が言っていました。
「光の何を見てきたのよ」
ちょっとした想いの行き違い、交錯していたそれぞれの想い。そんな中でもただひとつ信じていられるものっていう のは、この場合は光の「一途な想い」でもあったわけですね。長い付き合いで、散々聞かされてきた、光の主人公への 純粋な気持ち。
それに気付かず、あまつさえその光が純と交際することをぬけぬけと応援までしてやがる主人公に対し、怒りを ぶつけてしまうのは至極当然でもあるでしょう。
ただし、それは彼女の心に「安心感」を与えてしまったのも事実。それは光に対する「裏切り」以外の何物でもなかった ことは、彼女自身が知っていた事でした。
主人公の(ボケは別として)本質的な優しさを知っているから。恐らくは主人公に想いを寄せる理由というのは 光と同じだと思います。なんだかんだと言っても似たもの同士なんですよね、光と水無月さん。だから馬が合うので しょうけれど、ね。

シナリオ全編を通じて、悲しみの涙を流し続ける水無月さん。そんな彼女を、本当は泣き虫で弱い女の子だと、 ようやく認識できた主人公でしたが、それでもけっして主人公だけを責められるものでも無いんですよね、実際。
想いを隠し続けなくてはならなかったのは、友情を壊したくないから。
想いを告げられなかったのは、主人公を失いたくなかったから。
ともすれば想いをぶつけることで、全てが無に帰すかもしれないという不安は、水無月さんが拭うにはまだ幼すぎた のでしょう。それができる位大人の女性であったなら、結果論ですが主人公を好きになる事も無かったでしょうし。
結局、光との友情も壊すことなく、主人公というかけがえの無い人を得た水無月さん。
極限といっていい感情の板ばさみの中で得たこれらの「宝」は、きっと一生輝き続けることだと思います。
どういう訳か、主人公も人間的に物凄く成長したみたいですしね。
2人の未来に幸あれ

主人公にとっては、恐らく永遠に「憧れのお姉さん」という存在であろう女性です。
幼い日の主人公と光を知る人物ですが、しかし主人公は彼女を知っているわけではありません。勿論、「憧れの対象」 としての華澄さんは充分過ぎるほど知ってはいたのでしょうけれど、彼女そのものを知るはずはなかったと思います。
華澄さんが迷った末にたどり着いた「教師」という名の「職業」、就任一年目の彼女にとっては「教師」は職業の1つに 過ぎないと断言できますね。
一抹の不安は「教師」としてやっていけるのかどうか、では無いでしょうか。少なくとも、生徒を教え導く者であると いう事は理解してはいるのでしょうけれど、それが具体的にどういったものかが解らない、と。
そんな緊張の日々に、いつしかひと時の安堵感を覚える時があることに気付いたのはいつごろからなんでしょうか。そこに は、幼い日の、ある意味純粋なまま(天然ボケともいう)の主人公がいた。
至極ご都合主義ではありますが、つまりはそういうことだったんだと思います。
あれだけの美人ですから、言い寄ってくる男は数多くいたはずです。でも、それらは彼女のぽっかりと開いた心を埋める だけの人間ではなかったのでしょうか。
個人的な意見として、答えは「否」でしょうね。きっと。
恐らくは主人公なんか足元にも及ばないくらい、素晴らしい男もいたと思うんですよ、言い寄ってきた男の中に。
かつて彼女が一緒にバンドを組んだあの男性も、それ程ではないにしろ主人公より人間的に大きな人だったと思うんです。
何ゆえ主人公なのか。
「ショタ」とかいう言葉が囁かれ初めて久しいですが、どうもそれとも違うようです。彼女の主人公に対する想い、それは どこから始まったのかは、残念ながら作品中からは伺い知ることはできませんでした。
察するところ、彼女が主人公に対して「異性」を感じていたのはあの引越しの日辺りからではないでしょうか。
飛躍しすぎている事は重々承知ですが、後の展開を考慮すれば、あながち間違いでもなさそうですけどね。
そして思いがけない再会によって、それは一気に膨れ上がった、と。単なるつじつま合わせにも思えますが、それが 1番自然な成り行きでもあるかなと思います。
でも、彼女は主人公という「弟」と、もう1人の「妹」の事も、良く知っていたんですね。
「陽ノ下 光」
彼女の気持ちも知っていたんです、それこそ、あの幼い頃から。
華澄さんは大人です、言うまでもなく主人公たちよりはですけれども。物事の分別も、全てとは行きませんが知っている 人です。だから、押し殺していたのでしょう、自分の気持ちを。
でも、同じ人に想いを寄せる人から見れば、解ってしまうのでしょうね、態度とかで。
決して物事を荒立てたくないと思っているのは、何も彼女だけじゃないんです。光だってそうでしょう。あの優しい光 だって、そんなのは嫌だったはずです。そして、水無月さんも。
華澄さんが辛い想いに苛まれていることは充分理解できるんですが、何より1番辛かったのは、他でもない水無月さん だったんでしょうね。
華澄さんにきつく当たったのも、光の気持ちを知っているから、華澄さんの気持ちも知ってしまったから、何より、 主人公の気持ちも解ってしまったから。
そんな、人の「想い」がどういうものか、理解できないところに華澄さんの悩みの元凶があったのではないかと思います。 それは「自信が持てない」のではなく、「その術を知らなかった」といったところでしょうか。
茶道部室での水無月さんとの語らい、遊園地での光のよそよそしさ、それらが全て自分のせいだとしても、結果的には それが「自信」を持つきっかけとなった。教師としての自信、自分の選んだ道への自信、何より、自分が選んだ人への 自信。そこで自信を喪失してしまっては、光や水無月さんの想いを、本当の意味で踏みにじってしまうから。
全ての想いが一点に集中した時に、彼女はようやく「教師」としてのスタートが切れたんだと思います。
主人公を選んだことが正解か否かは、時間が教えてくれるでしょうが、それよりも彼女は「迷い続けた自分」と さよならできた事が1番の大きな宝になったんだと思います。
でも・・・
本当に個人的な意見なんですが、どうも印象として薄いなあ、と。このシナリオ。
プロットとしてはやはり光、水無月さん、華澄さんの3人の心の交錯があるんですが、その中ではやはり光と華澄さんは 水無月さんの引き立て役に甘んじて言えるようにも思えて仕方がないんですが。



ときメモ2トップへ戻る