ときめきメモリアル3 〜約束のあの場所で〜



運命のその日
桜舞い散る中で・・・




前作「ときめきメモリアル2」より2年、元祖であるPCエンジン「ときめきメモリアル」より実に7年の後にリリースされた作品。
もはや「恋愛シミュレーションゲーム」としての「ときメモ」の集大成として登場しました。

この作品以降も「ときめきメモリアル」というタイトルを冠した作品がリリースされていますが、私的にはこの作品が「ファイナル」と 思っています。
だって、ねえ、「ガールズサイド」はそのタイトルどおり、女の子向け、つまり「男の尻を追っかける作品」ですし、「オンライン」は ちと作品としての「ときめきメモリアル」とは言い難いですし、ね。


さて、やや横道に逸れましたが、この作品はプラットフォームを「プレイステーション2」へと移行し、その付加機能を存分に駆使しようとする 姿勢が見え隠れしています。
技術的な点から言えば、前作までのビジュアルが「固定」とすれば、今作品は「動き」がある点でしょうか。
アニメのようにキャラクターがこれでもかと動きます。ええ、動きまくりますとも。
ポリゴン処理とは思えないほど滑らかなキャラ表示はいい感じです。
それをさらに流麗にしているのは「トゥーン・レンダリング」というもの。
これは指定されたオブジェクト(多くはポリゴン)にアニメ的な陰影処理を施すというもので、これらの効果によってキャラクターの動きがより ストレスなく、立体感をだしています。

メディアはDVDソフトとなり、容量もグーンとアップ、というよりもあの悪名高かったらしい(実際ウザいです)5枚組みという呪縛から解き 放たれたことは、特筆すべき点ではないでしょうか。

さらに、前作で好評を博した「EVS」も、全キャラクター対応と不満点も解消されています。
とはいえ、先にも述べましたが私の「ときメモ」街道の出発点はこの作品でしたので、作品を重ねるたびに不満が増えてくるという、実に不可解な 現象に翻弄されてしまっています。

この作品には前作までとは違い、ヒロインは8人(隠しキャラ含む)と少数精鋭となっています。
これは、前作まで続いていた「関連作品」が出ていない事と密接に関係しています。

関連作品によって、キャラクターの個性を引き出していた前作までとは違い、この作品ではこのソフトのみで、それぞれのキャラクターの物語が完結 しているからです。
よって、それぞれのヒロインのルートは奥行きが大きく取られており非常に濃いものに仕上がっています。
このあたりは「この手のゲーム」では非常に好感が持てるところで、キャラクターデザインなどの良し悪しよりも物語重視な私としてはここが 「ときメモ」をプレイし続けた最大の理由でもあります。
もし、最初にプレイしたのが「ときメモ1」だったら、恐らくは後続の作品には手出しはしなかったでしょうね。
うん、断言できます。
勿論、「ときメモ1」が駄作という事ではなく、見えないところにある「物語」を見ることが出来なかったのではないか、という事。
事実、その表現がしきれなかった為に「関連作品」が出たのでしょうし、ね。

ゲームシステムそのものも見直され、前作まであった「容姿」、「話題」といったコマンドが廃止されています。
それに変わるものとして、デートのときには衣服の「コーディネイト」、話題は追加された「趣味」コマンドの話題により 実際に「話題」として使うなど、やや柔軟性というか複雑かつ簡素化(?)されています。このあたりは賛否がわかれるところだと 思いますが、私的にはどちらでもいいかな、と。
それよりも、あのスキルが蓄積しない「トコロテン」がない、というところが最大の改善点だと思いますが。


この作品の舞台は「もえぎの高校」。前2作とは全く物語上の接点はありません。
ほんとうに「ちょい役」で、それらしき人物が成長した姿で出ている部分もありますが、完全に独立した世界観と思って良いでしょう。
主人公もなんの脚色もなく、至って普通の人物で、ほぼプレイヤーにシンクロできる設定となっています。
故にこの作品では、対主人公というストレスが殆どありません。
まあ、これもプレイする人によって好みが別れるところでしょうか?


先ほども描きましたが、今作品ではそれぞれのヒロイン毎に物語が完結していますので、ヒロイン紹介と物語のアウトラインを織り交ぜて 書いていきます。
長文です、駄長です。だらだらになっています。
その辺はご勘弁を。


ではさっそく、この作品に登場するヒロイン達を見ていきましょう。 ちなみに、この作品でも主人公には「男友達」がいるわけですが、当然の事ながらそれは割愛、というか無視する事にしましょう。


牧原 優紀子
Yukiko Makihara
もはやときめきメモリアルにおけるメインヒロインの定番となった、「紅の髪」にして 「幼馴染」な女の子、それがこの牧原さんです。
 いままでのメインヒロインのいずれもが、程度の差こそあれ恋愛モノのセオリーとしての「幼馴染」であったわけなんですけれど、この娘 はやや毛色が異なっています。
「ときメモ2」のひかりんは7年間のブランクがありましたが、この娘の場合はブランクなどという次元ではないです。
主人公とは小学校から一緒でしたが、主人公が彼女をきちんと認識したのはなんと、高校に入学してから。ある程度は知っていたらしいのですが、 面と向かって話をしたのは、その日が最初でした。この時点でもう、「幼馴染」とは言えないとも思えますが。
ただ、過去の思い出なり何なりがない分、他のヒロインともそういう意味ではイーブンなわけでして、言い換えると

「脱個性のいかようにも映るヒロイン」

という位置付けもできるかと思います、まあ、穿ちすぎでしょうけど。
ともかく、この娘は始めから出現しているキャラクターで、対象パラメーターもまんべんなく、普通に3年間を過ごせばハッピーエンド となります。このあたりが「脱個性」というか、とっつき易さを追求した結果とも取れます。
それ故か、全ての「ときメモ」ヒロインの中で、オフィシャルのランキングで下から2番目という不名誉も貰ってしまったようです。
個人的にそんな嫌いじゃないんですけれど、これには「突出した個性が無い」ことも然ることながら、もう1つ理由があります。
この娘は
「究極の爆弾ムスメ」
でもあります。ほんとうに、いい加減にしろと言いたくなる位、爆弾を爆発させまくります。
いや、俺が嫌いならほっとけよ、みたいに思ってしまうのですが、そのあたりも人気低迷に一役買っていると思いますがどうでしょう。
「爆弾」=
冷たくしたり、放って置いたりすると、あらぬ噂を立てられた挙句、最終的に爆発して登場しているヒロイン「全員」の「好感度」と「ときめき度」が 一気に急降下する厄介なシロモノ
さて、この娘のシナリオを進めていくと、「駄菓子屋」が絡んできます。
その駄菓子屋のおばあちゃんは事の外この娘と話をするのが好きらしく、悩み事や相談事にも優しく受け答えしてくれていたようです。
彼女の、というかこの年頃の女の子の悩みといえば、「恋愛」と相場は決まっていますね、王道としてもそれが自然です。
彼女にしてみれば両親にも言えない、かといって親友にも言えない、ましてやその本人にも言えない悩みを聞いて、そして優しくアドバイス をしてくれるおばあちゃんは何者にも勝る「良き理解者」であったのでしょうか。
主人公を駄菓子屋に誘ったのも、恐らくはおばあちゃんの入れ知恵とも取れますね。
主人公を従えた(笑)牧原さん達に、おばあちゃんは、恋愛の話、そして自分の若い頃の恋の話を聞かせてくれます。それは牧原さんに 対するエールなどではなく、2人が無事恋人同士に落ち着くように、恋愛に必要な「何か」をわかってもらえるように、との願いも 込められていたのでしょう。

やがて、おばあちゃんは還らぬ人となります。
悲しみに暮れる牧原さん。そしてそれを元気付ける主人公。

自分以外の者を元気付ける、勇気付けることはとても難しい事ですよね。同じ経験をしている、いないに関わらず、表面的に慰めの言葉 をかける以外に方法は無いんですよ。それが本心からの行為にしても、悲しみは瞬時に消えてはくれないのですから、ね。
とはいえ、たとえそれが同情にせよ優しく慰めてあげれば悲しみが癒えるのは確か。
たとえ表面的であろうと、それは人間の本質的な「情」による行為そのものなんですよね。だからそれすら持ち得ない事を「無情」というんですが。
ともあれ、おばあちゃんは自分ができなかった事、伝えたくても伝えられなかった想いがとても辛かった事を、牧原さんに教えてくれます。 それは今ではあり得ない状況だとしても、恋愛に大切な事は同じ、だから勇気を持って自分の気持ちを伝えて、と言ってくれます。
墓前で読んだおばあちゃんの手紙は、彼女に悲しみ、戸惑いを乗り越えるだけの力をくれたのでしょう。
最後に彼女が流した涙は、決して悲しみだけが詰まっていたわけでは無いはずです。それは主人公に伝わったかどうかは定かではありません が、卒業の日に主人公に笑って告白できたのは、その証だと思います。
なんだかんだ言って、この娘のシナリオ、抑揚がないようで結構奥が深いのかな、とも思っちゃいました。
まあ、私の深読みしすぎ、とも言えなくも無いですが、ともあれ牧原さん、爆弾は控えめに。



相沢 ちとせ
Chitose Aizawa
牧原さんの親友で、英語が得意で怪しげな関西弁(なのか?あれ)を話し、流行に敏感な少女、ちとやんです。
この娘も主人公とは同じ中学の出身なんですけれども、初登場まで主人公は彼女の存在すら知りませんでした。かたや彼女のほうもそれ程面識があった 訳ではなさそうでして、いったい主人公たちはどんな学校に通っていたんでしょうかね?
もしや主人公は「都合のいいとこだけ記憶喪失」なのか?、それとも「単におばかさん」なのか?、はたまた中学自体が「超マンモス校」だったのか・・・
う〜ん、謎ですな。

ま、それはいいとして英語が得意、ということなんですけど、それは単に成績が良い、という事ではなく、英語が好き、という事。厳密には「海外生活にあこがれて、必然的に英語に馴染んできた」といった 所でしょうか。

よく言われる事なんですけれど、学校で教えている英語ってのは全く持って「役立たず」なのは承知のとおり。故に彼女が英語の成績がさほど 良くないのはそういった理由なんでしょうかね。実践的な、というか普通に話せる英語ってのは学校の教科書だけでは身に付きません。断言します。
好きこそものの上手なれ、といいますが、彼女はまさにその典型でしょうね。
英語に限らず、外国語をマスターするには実際に話す事が1番の近道なんですが、そうではない彼女が得意と言う事は、「努力の賜物」といって良いのではないでしょうかね。

まあ、そんな彼女ですが、結構おもろいモノ好きです。
関西弁だから、ボケとツッコミに長けている、というのは短絡過ぎともいえますが、それを差し引いても彼女との会話は全くスムーズ。
へんな緊張感がない、というのは即ち、話しやすいということなんでしょうね。その為か、友好関係もこの作品中1番多い(メインの牧原さんは別ですが)ですし 、主人公とも隔たりなく付き合う関係でもあります。
こうなると、恋愛という観点からするとあとあとが心配になるんですが。まあ、杞憂に終るんですけどね。
つまりは主人公は恋愛対象では無い、という結論に達します。無論最初は、ですけど。

彼女はその憧れもあって、「海外留学」を目指しています。しかし、それを知る者はいません。
親友の牧原さんにも内緒です。物語が進展すると、結果的に自分から主人公にばらしてしまうんですが、その頃になると主人公は「友人」よりも 「恋愛対象」としての関係になっています。
そうなるともう、お約束として「迷い」に翻弄されるわけですね。留学したい、でも、主人公とは離れたくない。
「ときメモ1」の片桐さんみたいな「芸術家肌」ではないからか、自分の気持ちを押し殺してまで留学は出来ないのでしょう。でも、やっぱり「夢」 は叶えたい。
普段明るく振舞う彼女ですが、えてしてこういう娘が悩むとそれは根が深くなるって言うのがセオリーですかね。
ある夜、主人公を呼び出して、その悩みを遠まわしに伝えるのですが、主人公は「夢だったんだから、頑張れ」といいます。
しかし、多感な女の子、その言葉は嬉しかったのでしょうけれど、同時に「自分は主人公にとって必要の無い人間」と、ある種ヒネた受け止め方も してしまいます。感情的になってしまうのも仕方がないと言えば仕方がないのですが、ともすればどう言葉をかけても同じような結果になるんでしょうね、きっと。
ま、結局は誤解もとけてさらに仲が進展する2人ですが、なにか吹っ切れる物があったのか、主人公を信頼したのかは定かではありませんが「留学」を 前向きに考えるようになる彼女。

迷う事、不安な事は決して自分1人ではいい方向に向かわない、人と人の信頼や助けがあって初めて的確な解決ができるということを、彼女は 高校生にして学ぶ事ができたのではないでしょうかね。
何の心配も要らない。私にはこんなに自分を大切に思ってくれる人がいる。
それは何よりも大切な「宝」であり、彼女のとっての「勇気の神様」になりえることでしょうね。

ああ、また真面目に書きすぎてしまった。

ところで
今作品ではキャラクターがうにょうにょと動いてくれるわけなんですが、この娘がいちばん「イキイキ」としていますね。
元気そのもの、といった感じ。
しかも中盤でみせる「ネコぐち」は非常にキュートです。はい。
でも、人気ランキングでは牧原さんとブービーを争っていたんですけど・・・(汗


河合 理佳
Rika Kawai
このシリーズにおける定番の「理系我侭キャラ」です。
じつは、この娘に関しては何を書いていいか非常に迷ってしまうんですよ。
というのも、私のストライクゾーンからは完全に離れているキャラでして、とりあえず全員クリアのために クリアしてみた、というのが実情です。

んが、しかし

この娘のシナリオは、物凄く泣けました。いや、遺憾ながら。
恐らく、ときメモすべてのヒロインの中で、ダントツで感動したんじゃないでしょうか。
この娘ははじめ、理数系のレベルを上げていくと、なにやらストーカーまがいの行為をしている場面に出くわします。対象は勿論主人公。
ビデオで隠し撮りなんかしています。
やがて話をするようになるんですが、そこでもなんか実験に付き合わされて(というか実験台にされて)しまいます。

何なんだ、この娘は?と思いました。

じつはこれらの行動は、現在作っている「ロボット」のデータ集めだったんです。何ゆえ対象が主人公なのかは未だに謎なんですが、 つまりはそういう事。
主人公のコピーロボが目的かと思いきや、実は別のロボットが本命だったりします。

「メカふりくたー」
それが彼女が本当に造りたかったロボット、犬型のロボットです。
ある日、主人公がそのロボット作成を手伝っている時に、パソコン内にある写真を発見します。
それには、大きな白い犬と、それに寄り添うように戯れる幼い彼女が映っていました。その彼女を見守る眼差しは、まるで母親のようでもあります。
彼女の両親は共働きで、幼いころの彼女の家族と言えるのは、その「犬」だけだった、と聞かされます。

その犬の名前は「フリクター」。
やがて「フリクター」は病に倒れ、死んでしまいます。ダメ押ししたのが彼女というのは内緒ですが、それは彼女が大好きな「フリクター」を 元気にしようとした、幼い彼女の不安からと精一杯の優しさからの行為でした。

あ、もうここで胸が苦しくなってきました・・・

そう、「メカふりくたー」は、彼女にとって両親と同じくらい大切な「フリクター」だったんです。
ここまでの過程で、子犬にじゃれつかれて困惑し、「犬は嫌い」とまで言い放った背景には、そういう事があったからなんですね。
「フリクター」がいたから。
大好きだったけど死んでしまったから。あんな想いは二度としたくないから。
「メカふりくたー」を造ろうと思ったのは、ロボットなら死なないと思ったから、なんですね。
しかし、そんな簡単に造れるものではないのは明らか。ゲームという、ある種なんでもありの世界においてもそれは至極当然な事です。
まあ、結局は造っちゃうんですけどね。
「フリクター」の思考、記憶、行動など、全てをそっくりに作ったつもりですが、「メカフリクター」は言う事を聞きません。
コマンド実行を明らかに拒否します。
でもそれは・・・

まあ、あとは実際にプレイしてみてください。書いてて目頭が熱くなっちゃいましたよ、ほんとに。
彼女のシナリオは、やはり彼女の「心の成長」を主眼にしています。
悲しみを乗り越えるきっかけを、心にずっと引っかかっていたモノを取り去るチャンスを、「フリクター」は与えてくれました。
もう、彼女には怖いものなどないでしょう、立派に「紐緒閣下」の配下に加わりクリエイターとしてやっていけるでしょうね。
それにしても、たった一回のプレイだったのに、良くぞここまで書けたもんだ。
よっぽど感動的だったんだな、このシナリオ。なんか、思惑にズッポシはめられた気がしないでも無いですけど。


御田 万理
Mari Oda
この手のゲームに留まらず、アニメ、漫画には必要不可欠のお約束タカビーお嬢様系キャラ、まりりんです。
出会った当初からそのもそずばりの印象を受けますが、本当の所それ程高飛車、というわけでもないです。
まあ、このシリーズ全般的にいえることなんですが、お嬢様(もしくはタカビー)キャラは実際には素直な娘、というのが伝統ですか。

彼女もそんな設定があったりします。ええ、所々。
実の所、高飛車というよりも「プライドが高い」と言ったほうが正解でして、しかもそれは決して「慢心」から来る物ではない、というところがミソ。

確かに両親は有名人で、自分も子役として映画に出演したりしています。ましてや周りからはある種羨望の眼差しを向けられる事もあるでしょう。 しかし、今の自分に満足はしていない、それは女優としても人間としてもまだまだ未熟だと言う事を自覚しているんだと思います。
それは彼女のシナリオを追っていくうちに、彼女自身が明かしてくれますが、かといってそれを表面に出す事が出来ないのも事実でしょうね。
そんなジレンマが、あのような態度となって現れているのだとすれば、事恋愛においてはそれを理解できる男でないと彼女とは付き合えないのでは 無いでしょうか。勿論、彼女が女優であろうが無かろうが、です。

ストイックなまでに努力家である事も見逃せない事実で、自分のプライドもあってかあえて普通の「もえぎの高校」へと入学した彼女。そこで自分の 可能性を試したい、他人の敷いたレールを進みたくはない、なんて、それを我侭としてではなく成長の過程として捉えられれば、彼女と付き合ううえでも 何事もプラスになるんだと思いますが、どうでしょう?

シナリオ中盤で、彼女はスランプに陥ります。ど素人の主人公のお陰で、セミプロの彼女はそれを克服して行きますが、そんな場面も それを如実に表していますよね。
「彩のラブソング」での主人公も曲創りでスランプに陥りますが、物事に固執すればするほど視野が狭くなり客観性が薄れてきます。
そこから抜け出せる人ってのは、実はそんなにいないんですよね。天賦の才能を持ち、自己完結できるっていう人は完全なマイノリティで、極 僅かでしかありません。それは実際の過去の歴史を見ても明らかでして、人間てのは殆どがそこでもがき、悩み、苦しみます。
彼女の場合もまさにそうでした。主人公はズブの素人でしたが、結局は演技を見る人、作品を見る人の目線は、主人公の目線そのままだと いう事に気がついたからこそ、スランプを克服できたのではないでしょうか。言い方を変えれば、それは紛うことなく「愛の力」だと。

・・・・・書いててはずかしいってばよ。

心の成長というテーマでもありますが、その中にも、自分の進むべき道は自分で決める事ではありますが、それは決して自分ひとりでは 進む事はままならない、成し得ない事なんだ、というのがもう1つのテーマとしてあるようにも思えますね。
沢山の人の、あるいはかけがえの無い人の助力があればこそ、たとえ険しく長く、曲がりくねっていても道は開けてそして、自信を持って進んでいけるんだ、と。

いいのか、こんな真面目に書いちゃって。

1つ、補足を。
彼女は本当に世間知らず、というか、一般的な常識に疎い面があります。
彼女とのデートでは、そのあたりをつついてみると非常にオモロイです、はい。時には大爆笑もののボケをかましてくれる事でしょう。
ぜひ、お試しあれ。ただし、嫌われますけどね。


橘 恵美
Emi Tachibana
大和撫子という表現がぴったり、物腰はおしとやかで、古風な雰囲気を持ち、武道に打ち込む姿が美しい少女です。
「ときメモ1」の古式さんに通ずるものがありますが、確かに天然ぶりは古式さんとほぼ同等。
でも、物腰とは裏腹にスポーティな雰囲気も持つ、ある意味古式さんを超えた、といえるキャラでもあります。
武道は「合気道」をやっており、学校の部活以外でも、街の道場にも通うほど熱心です。
彼女曰く「精神と身体を鍛えるにはもってこい」だそうです。う〜ん、武道の何たるかを心得ておりますね。
感心な娘じゃ。
また、どういう繋がりなのかは全くの謎ですが、神条さんとは親友の間柄で、よく一緒に買い物などをしている所を目撃します。
この娘はとても他人の事を気にかけたりする心の優しい娘でもあります。
特に親友の神条さんには、世話焼き女房よろしくいろいろと世話を焼いているようです。当の神条さんはありがた迷惑といった感じみたいですが。(いや、本気で迷惑とは 思っていないでしょうけど)。

そんな彼女ですから人望も厚く、特に部活では後輩から絶大な人気を得ているようです。
後輩を大切にし、優しく接し、かといって練習中は厳しく接する。
先輩といわれる人の「理想像」そのものなんでしょうね、きっと。
特に武道は一歩間違えれば大怪我をしますから、指導も厳しくなるのでしょうが、いや、合気道ってのはどうなんでしょ?まあ危険は危険でしょうね。  余談ですが空手は間違いなく怪我します。痛いです。組み手で金的蹴られた日にゃあ、悶絶ですよ。マジで。

それはさておき、物語を進めていく内に、ある日彼女に試練が訪れます。
ひょんな事から大怪我をしてしまう橘さん。歩く事も出来ない位の怪我をしてしまいます。
当然、部活動にも出られません。
どうやったら階段を踏み外して「内側側副靭帯断裂」になるのかは謎ですが、そんな大怪我を負ってしまったわけなんですが、その彼女の 見舞いに行くと、主人公に心配をかけまいとする姿が痛々しく感じます。
彼女は去り際、何かを言おうとしますが、それは「ある心配事」でした。
退院してもしばらくは運動ができない、それは部活動にも出られないという事です。
そして、「ある心配事」は現実のものとなってしまったのです。
あんなに慕ってくれていた後輩たちは、1人残らず部を去ってしまいました。
1人道場で涙に暮れる橘さん。
自分がこれまでしてきた事に自信がもてなくなった彼女、自分は何をしてきたのか、不注意から怪我をした自分が悪いのか、と悩みます。
体の傷、そして心の傷。ともに癒えるのは時間がかかるものです。
「病は気から」といいますが(この場合怪我ですが)、悩むことで怪我の治癒も遅れてしまうのではないでしょうか。
そんな彼女に主人公がしてあげられることって、何があるでしょう。同情して、優しい言葉をかけてあげても、失意の彼女を本当に元気づける 事はできないでしょう。
でも、そうするしかないんですよね、実際。こればっかりは彼女自身が納得するのを待つしかないんですよ。
決して彼女が悪いわけではない事は事実で、そこに気がついた(というか、自己中過ぎるぞ、森、とその他)後輩たちは、謝罪して部に 復帰します。そこで彼女はようやく、悩みを乗り越えられた。
誤解や失望といえるほど大げさなものではないにしろ、お互いを信用できなかった事が解り、怪我と引き換えにその信用を掴み取った 橘さんでしたが、まりりん同様、そんな彼女の「心の成長」がテーマとなっているシナリオでした。いや、よかったよかった。
ところで、そんな彼女をメンタルな面で支えてきたのは他ならぬ主人公なんですけれども、はっきり言って主人公が彼女の為にした事って なにも印象に残っていないんですよね。強いて言えばインターハイに出たくらい。
色々な面で彼女をサポートした事は事実なんですけど、印象に残るようなことをしていないのも事実。案外こういうときの男ってのは、こんなものなんでしょうかね。
ただ、そこはかとなくですが、しかし確実に彼女の心の傷を癒していった主人公。そんな主人公だからこそ、彼女も好きになったんでしょうけど、ね。


神条 芹華
Serika Shinjyou
んで、神条さんです。
そこはかとなく影があり、そこはかとなく姉御肌。どことなくはにかみやさんで、どことなく寂しがりや。
なんというか、不思議な雰囲気の娘です。
とはいえ、この作品中では1番のお気に入りです。

登場したての時にはぶっきらぼうで愛想なんて欠片もありませんでした。ちと「ヤン」入ってる?見たいな印象を受けましたね。
でも、例の「夕立イベント」に見られるように、本質はとっても優しくていい娘なんですね。
ちょっと照れながらも「困ってる奴を見るとほっとけない」というのは、それをばっちり表しています。
しかも結構生真面目な性格らしく、デートに誘うと「遅れるなよ、遅刻なんて最低だぜ」なんて、几帳面な印象をちらつかせます。
まあ、当の彼女はいつも遅れるんですが・・・。
序盤も後半も変わらず、彼女はデートの度に遅れてきます。何度かは時間ぴったりだったり、主人公よりも早かったりしますが どうも遅れてくる回数のほうが多く、「必ず遅刻」という印象が植え付けられてしまったようです。
まあ、その理由というのは人によって様々なんですが、彼女の場合はやや事情が特殊でもあります。それは人に知られると困る「秘密」 なんですが。

本質はとても優しいと書きましたが、困っている人を見ると放って置けない、でも人との交流にはどこか消極的。主人公に対してもどこか よそよそしさが先にたってしまいます。
あまり細かい事にはこだわらないようで、意外と生真面目な性格もあり、それもどこか自分の本来の姿を押し殺しているようにも見えます。
それは全て、その「秘密」と密接に関わっていることです。

思いっきりネタばらししちゃいますが、彼女は実際には年上の女性です(オフィシャルでは同級生となっていますが、わたしゃ納得していません。よってあくまで私の主観です)。
それは、留年とかそういう理由で「同級生」をしている、という事ではありません。

さて、ここから先は「少年漫画的ファンタジー世界」ですのでご注意を(いや、これもゲームでしたっけ)。

彼女には不思議な力があります。 それは、常人には見えないものを見る力、そして、それらを排除する力。
彼女は政府から派遣、というか政府にいいように使われている「魔物退治屋」です。容姿、年齢を考えると「教育機関専用」とでも言いましょうか。
全国の学校に関連する「悪霊退治」が彼女の仕事で、そのせいか転校を繰り返しており、1つ所に留まることはありませんでした。
それ故に、見た目がまだ「少女」である限り、それに見合った学校を転々としてきたんですね。それを踏まえれば彼女は少なくとも 主人公よりは2、3歳は年上という事でしょうか。
「ときメモ」史上最高のありえなさ、ここに極まれりといったところですが、まあ、ゲームですので。割り切りましょう。

そんな荒唐無稽な設定よりもむしろ、その環境に置かれざるをえない背景が非常に気になります。
子供のころからその常人ならざる力を使いまくった結果、政府に束縛されてしまったわけです。両親を人質として。
言ってみれば、政府に強要されているわけですね、その仕事を。彼女が言った「宮使いの身」とはそういうことだったんですね。
両親との再会、という餌と引き換えに、魔物との戦いを甘受しています。
もえぎの高校での仕事が終われば、彼女はまた別の仕事へ行かなくてはなりません。それは、これまでと同じように、この場所から居なくなるということ。
彼女が人との交流を避け、友人知人を作ろうとしなかったのは、つまりはそういうことだった。
仕事もしにくくなる、仕事が終われば去ってしまう、それよりも危険な目にあわせてしまうから、という理由も大きかったんだと思います。優しい彼女のことですから。
でも、そんな孤立している彼女に臆面もなく親しげな態度をとり、気安く話しかけ、あまつさえデートにまで誘うバカな 男子は、主人公が始めてなのでしょうか。
興味本位というか、彼女に声を掛けた男の子は多数いたと思うんですよ、ぶっちゃけ。でも、彼女が素っ気無い態度を取り続けた結果その殆どは 自然と離れていったのでしょう。でも主人公だけは バカなだけに 純粋なだけに彼女から離れていく事はなかったのでしょうね。

というか、それはイコールプレイヤーの選択肢なわけですが。

純粋に、とりたてて邪な気がなかった(とも断言できませんが)主人公を無下にする事もできなかったんでしょう。それゆえに、いつしか主人公 が「単なる男の知人」から「友人」、そして「気になる男」、結果「好きな男」になっていったんだと思います。
彼女が抱える「秘密」以外には、それを阻害する要因は何もなかったのですから。
まあ、それには主人公にそれだけ何らかの「魅力」が あることは絶対条件、というか大前提ではあるのですが。
かくして、主人公に意外な形で自分の秘密が暴露してしまい、諦め半分で自分の過去、秘密をさらけ出す彼女ですが、そんな事はほんの ちっぽけな事だと言わんばかりの主人公の態度に、改めて自分の主人公に対する気持ちを確信した事でしょう。
でも、ちっぽけな事じゃないんですけどね。恐らくはもう二度と両親と逢う事はない彼女にしてみれば、ね。

ある意味、これまで何処までもドライな、クールな生活を送ってきた彼女にとっては、主人公とのひと時は何事にも代えがたい「オアシス」 になり得たのではないでしょうか。

エンディングで初めて彼女が口にしたであろう「好き」、「愛してる」という言葉に、ときメモヒロイン中の誰よりも重みがあったと感じるのは 私だけじゃないと断言できます。

主人公のお陰(かどうかも定かではないのですが)で、ようやく「秘密の仕事」から解放された彼女。主人公と2人で歩む新たな人生に 失ってきたもの以上の幸がある事を願わずにはいられません。

ところで、彼女はどうして橘さんとは親友になったのでしょうか。橘さんが彼女の秘密を知っているとは思えませんが、そこは永遠の謎ですね。
まあ、それいったら橘さんの生活も謎なんですけどね。


渡井 かずみ
Kazumi Watarai
学業もそこそこにバイトに明け暮れる少女、恒例の隠しキャラクターがかずみちゃん。
「2」の一文字さんに通ずるキャラクターですが、事情はもっと辛辣であると言えるでしょう。
彼女の登場は一筋縄ではいきません。意識せずとも登場することはありますが、彼女ねらいで物語を進めるという事はすなわち、誰かを「囮にする」という事。
まあ、大抵の場合は牧原さんになるのでしょうけれど(笑)。
デート先で彼女を“ジュディ”し続けることで、ようやく彼女の登場となります。そこに至るまでには、幾度かのデートをしないといけない、という事ですね。
同じ学校で、あんな出会い方をするのになんでそんな・・・などと思いましたが、ま、ゲーム、ということで。

先にも言いましたが、彼女はバイトに忙しい日々を送っています。
でもそれは、家計が苦しいからとか、お小遣いが欲しいから、という、極普通にある理由ではありません。
そこには、彼女の突き抜けるような明るさの裏返しともいうべき事情が絡んでいます。
彼女はいつも明るく振舞っていて、それでいてとても元気です。
しかし、バイトに忙しい日々を送っている彼女とはなかなか遊びに行くことはできません。といっても、普通に誘う事はできるのですが、あまり遠い場所へは 遊びに行けないのです。
そんな彼女ですから、やはり一文字さん同様、普通に女の子として過ごす事にも、すこし憧れていることも事実です。
そのように過ごそうと思えば、充分できる環境ではあるのですが、あえてそうはしない。そのあたりは一文字さんとはやや違っている部分ですが、 そこには彼女自身の「事情」と「責任感」がのしかかっているから、なんでしょうね。

どんな所でのデートでも、楽しいひと時を本当に楽しく過ごす彼女。牧原さんとも友達で、一緒に料理の勉強や買い物なんかをしたりして、忙しいなかでも 楽しい毎日を送っています。
でも、その影には・・・

彼女がバイトに明け暮れる理由、それは彼女が「居候」であるから、なんですね。
べつにしたくてしているわけではありません。彼女は母親がいません。父親だけです。でも、その父親は「病気」で長期の入院生活を送っています。 その為に親戚の家に居候しているわけなんですが、その親戚もべつに彼女を冷遇しているわけではありません。むしろ暖かく、本当の家族のように (っていうか、ある意味家族も同然だと思うんですけど)迎え入れてくれています。
でも、彼女はそれではいけない、自分の為に負担をかけまいとバイトをしている、という事なんです。

わりとこういう事情の人って、現実には結構いてはると思うんですけれど、いくら親戚とはいえそこまで親身になってくれる人ってそうは居ないと思うん ですよね。たぶん。
余談ですが、幸いにして私の親戚の人達はそんなに他人行儀な所は見られませんでした。家族と同じ位、いや家族同様の接し方しか記憶にありません。 しかし、知人の話や、昨今のニュースなんかを見聞きすると、必ずしもそうでない場合のほうが多いのではないでしょうか。そういう意味では私は 恵まれていたのでしょうか。表面的な付き合い方、というのもなかったし。
彼女もそんな感じではあるのですが、やはり父親のことは心配の種でもあるのでしょうね。

忙しい日々を送る彼女にとって、男の子とのデートは現実を忘れさせてくれる貴重な「息抜き」のひととき。
ある日、彼女からデートの誘いがありました。遊園地でのデート。
彼女自身は遊園地は「遊ぶ場所」ではなく「働く場所」であったのですが、普通の人からすれば「遊ぶ場所」は、彼女からしてみれば ある種「憧れの場所」でもあったのでしょう。彼女自身が語ってくれるそのあたりの事情には、ちょっとホロッとくる所があります。
そのまま、なんの心配もなく過ごせれば、忙しい事を除けば彼女も安心できたのでしょうけれど。

それは突然やってきました。
父親が危篤。
たった一人の肉親が、今まさに危急存亡の秋(時)に差し掛かっている。そのときの彼女の狼狽は、痛いほど良く解ります。
バイトでもなんでもできるのに、そんな父親に何一つしてあげられない、何もできない。ただ、不安に苛まれていることに耐えるしかない。
主人公に電話をかけたのは、単に不安からの行動ではなく、何をしてあげたらいいの?という問いかけでもあったんでしょう。
それだけ主人公に信頼を寄せている、というのは自惚れかも知れませんが、主人公にしてもどうしたらいいかわからないでしょうし。
できることといえば、そばにいてあげる事だけ。
「大丈夫だよ」
と言ってあげる事は簡単な事なんですが、しかし無責任な事を言えないのは何も主人公だけじゃないんですよね。彼女の事、そして万が一の事を考えれば誰でもそうなっちゃうんじゃないでしょうか。

少なくとも私は言えません。たとえ元気付けるために必要な言葉であっても。最悪の状態になった時の悲しみを何度も味わっているから。

普段からは想像もつかないほどうろたえ、不安がる彼女。主人公は元気付けようにも、なんて言ったらいいかはわかりません。
一晩を不安と共に過ごした末、結局は持ち直した父親。とりあえずは峠を越して一安心できたわけなんですが、油断はできないのは変わりません。
そんな彼女を、支えていける男に要求される事って、一体なんでしょうね。
優しいだけじゃダメでしょう。強いだけでもダメ。勿論、勉強だけできてもダメでしょうし、それは彼女自身があの病院で痛感したことでもありますからね。
恐らく、そこいらの男よりは彼女のほうがよっぽど芯が強いんだと思います。そんな彼女とこれから共に人生を歩んでいこうとする主人公には、 並々ならぬ人間的な大きさが求められるのではないでしょうかね。それがあって初めて、彼女を心から微笑ませる事ができるんだと思います。
う〜ん、さすがは隠しキャラクターです、奥が深いです。
もはや「恋愛」という次元を超越していますね。課題が残るシナリオでした。


和泉 穂多琉
Hotaru Izumi
隠しキャラクターの頂点、というよりも、ときメモヒロインの頂点に君臨するであろう少女、それが和泉さん。
容姿端麗、頭脳明晰、成績優秀、スポーツ万能という、あの「紅い女帝」を彷彿とさせる一方、どこか影があり、憂いを含んだ表情、そしてそこはかとない儚さを 醸し出すあの「桃色の髪の少女」ともダブって映る、ある意味ヒロイン、というか“萌え”要素の「集大成」というべきキャラ。まあ、さすがに「幼馴染」ではありませんが。
けっこう良い所のお嬢様らしいのですが、その割には中学生にして将来を誓い合った男性がいたなんて、いったいどんな家庭環境だったんで しょうかね?まあ、「許婚」っていう設定もありかもしれませんが、そのあたり、突っ込んでみたいものです。
過去全ての作品を含め、人気、それから難易度も非常にハイレベルだそうです。そういう要素を目一杯詰め込んだキャラですので当然といえば当然でしょうか。 ただし、私はこの作品が初の「ときメモ」でしたので、それほどではありませんでした。攻略という観点だけで見れば、「紅い女帝」のほうが事の外難儀しました けど、どうなんでしょう?
彼女との出会いは、ネットで、というところが時代の変遷を踏まえているというか、今までにない出会いの要素でもありました。これも印象 深くなる要因でもあるのでしょうね。
ただ、難点をいえば物語の“起承転結”の“転”にあたる、このネットでの2人の関係が最後まではっきり完結できていない点は惜しまれる所。
なにやら納期の関係で割愛されたとか。そこ削っちゃいかんでしょ?普通。
それはさておき、やがて学校でも逢うわけですが、そりゃあもう、八重さん真っ青なくらい素っ気無いです。というか、完全に避けられてるし。
これは彼女の悲しい過去が直接の原因でもあります。それは、八重さんのように「裏切り」よりも、ある意味救いようがない出来事でした。
先ほどちょっと出ましたが、最愛の男性を事故で失ってしまったからなんですね。それも、目の前で。
思春期盛り(この言葉、変?)の彼女が、目の前で、恐らくは初めて恋した男性を失うというのは、言葉では表せないくらい悲劇的な事でしょう。
ただでさえ感情が研ぎ澄まされている時期です。下手すると精神崩壊までいく場合もありますし、実際それに近い状態を目の当たりにした事もあります。
「君望」の孝之くん女の子バージョンとでも言えるでしょうか、ただ、そちらは目覚めるだけましですが。
そんな彼女ですから、心の傷は癒えるのに時間が必要です。いくら彼女の気持ちの問題とはいえ、それは彼女1人に背負わすのは酷というもの。
それができるのは、本気で彼女と向き合い、過去の出来事を消し去り、暖かく包んであげ、さらに大きな愛情で包み込めるような「男」でないと いけません。
主人公に求められるのは、すばりそういった「慈愛に満ちた人物像」だと思います。故に過去最高レベルとも言われる能力が要求されるのでしょうか。
徐々に打ち解けていって、彼女が笑顔を見せるようになっても、それはようやくスタート地点に立てた、というだけであって、この作品ではゴールである 「卒業の日」からが、2人のこれからの出発点なんだと思います。「卒業式」は、じつは彼女にとって「過去からの卒業」といえるものであって欲しいと 切に願わずにはいられません。
同情?偽善?いいんじゃないですか?そこから始まる優しさだって、充分本物になりえますよ。
当の本人にとっては、それでも少しは癒される事でしょうから、ね。 ほったらかしよりはよっぽどいいです。
・・・う〜ん、真面目に書きすぎちゃったかも。



この作品のテーマとしては、キャラ別の項目でも度々でてきましたが「心の成長」という事でしょうか。

ともすれば、単なる恋愛模様だけを追いかけるゲームとしてしか見られない事も確かにある事なのですが、 この「ときメモシリーズ」が他の多くの「恋愛シミュレーション」とは一線を画している所以は、じつは このような「成長記」、言ってみれば本当に「キャラクターの物語」を上手に絡めている事に尽きるのでは 無いでしょうかね。

私が最も重視する「物語性」にプラスαの要素としての「恋愛」を絶妙のバランスで構成しているところは さすがとしか言いようもなく、それ故にこれだけのシリーズがリリースされたのでしょうね

その「完成形」とも言えるのがこの作品だったのではないでしょうか。
なにはともあれ、個々の物語も楽しめて且つ全体的な雰囲気も楽しめる、一粒で何度も美味しい作品 である事は間違いありませんね。



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