私はパンを焼きました。だからあなたも私にパンを焼いてください 〜大空寺 あゆ 編〜



悪魔的に邪悪な性格と殺人的な口の悪さを誇る「すかいてんぷる」の核弾頭。
実は世界に名だたる大空寺財閥(財閥?)の一人娘で、帝王学の一環として財閥グループ末端の(・・・財閥?)ファミレス「すかいてんぷる」でバイトをさせられている。
いやはや、口の悪さは留まる処を知らず、そしてそれは何故かいつも孝之に向けられており、時にはあろうことかお客にまで及ぶ。
どこまで本気かは知らないが、我侭も言いたい放題。

とは申せ、私は何気に気に入ってます。あゆ。

暗く重たい雰囲気漂う第2章にあって、この「すかいてんぷる」でのバイトはひと時の安らぎでもあったりします。
第1章でのあの砕けた明るさがあった孝之、彼本来の姿とでも言いましょうか、それが垣間見られるのはこの空間だけ。
それは、あゆの存在に由る所が非常に大きいように思われます。
立ち直り、普通に生活できるようになった孝之、そして「すかいてんぷる」でバイトを続けるうちに明るさを取り戻していったわけですが、そこには「天敵」ともいうべき、あゆとのやり取りもあったからでしょう。

彼女の歯に衣着せぬ悪口雑言、実のところ、あゆにとってはそれもここだけのものでしょう。と言うより、孝之にのみ発せられるもののような気がします。
家ではあのお嬢様口調で通しているようですし、接客でも「接客モード」で対応しているようだし。
使い分け、というのもちょっと違う、どちらが地でどちらが演技かはわかりませんが。

あゆと孝之、お互いにフランクな間柄である。が、しかし・・・・・
いつから彼女が孝之に好意を持ち出したのかは結局わからずじまいでした。
付き合いとしては孝之が先輩と言う事から、1年とちょっと位でしょう。しかも初めて会った日から、バトルモードに突入していたようですし。
でも、先ほど述べた様にあれだけの言合いができたのは孝之が最初だったのでしょう。恐らく・・・・
お互いが飾らない、私生活の柵などこそ明かしてはいませんが、自分をさらけ出して付き合っていたのですから、お互いが本当に憎み合っていたならば、今この時にそろってバイトはしていなかったのでは?そう思えてなりません。

あゆの憎まれ口は孝之だけに。孝之本来のあの明るい性格はあゆだけに。

お互いが、意識はしていないものの、かなり身近に存在を感じている、そんな感じで。

そして、あゆがその関係をはっきりと意識しだしたのはあの「ゴミ」事件からか?
孝之の影の部分、すなわち、私生活での辛い部分を垣間見た時にあゆは意識しだした、と。
孝之自身はあゆに告白されるまで気がつかなかったようですが。
まゆに嫉妬心を抱いたのも、結果的にこの事件があったから、きっかけができてしまったから。
素直になれず、かといって頑なに拒否する事もままならず、そんな中で孝之はまゆには優しく接していて。
孝之からしてみれば、扱いというか、接し方はまゆが入ってくる前とは寸分も違ってはいなかったはず。
それに嫉妬していると気付いた自分がいて、どうしていいかわからない、それが、まゆにぶつけられてしまった、と。
意地っ張りではあるが、裏を返せばそれは孝之に本心を悟られない為、自分の正体を明かす事ができない為。
この性格、どことなく水月を彷彿とさせます。

だから、と言う訳ではないですが、あの日水月にぶつけた口撃は相撃ちのようにあゆも水月も胸に突き刺さるものがあったのでしょう。

「私はこんなにがんばりました。だから私を褒めてください。」

けして届かぬあゆのがんばった結果と寂しい心の叫び、それが聞き入れられない悲しさ、悔しさ。そして涙。
普段からは想像もできない弱さをみせたあゆ、でも、そのあゆのお陰で、いままで拭い切れなかったものを吹っ切るきっかけを得た孝之。
水月には悪いが、あゆのあの行為がなかったら、孝之にとっても水月、遙にとっても辛い未来しかなかったのでは(しつこいようですが、このシナリオのみの話)。

そしてそんなモノは必要ないとばかりにやってしまったあの「思い出ぜ〜んぶブン投げ」事件
初めは怒り心頭の孝之ですが、そこはヘタレの孝之君。あうあう言ってるうちにようやく気付いたあゆの気持ちと自分の気持ち。
涙で語った水月と遙の事、その孝之の影の部分を見事に捨て去ってくれたのだと。不安はいらないのだと。

もう、この時点であゆ、最高に好きになりましたよ。

素直になりきれないのは孝之だから。
でも、孝之だから全てを投げ打ってでも一緒に居られる。それ以外のことはほんのちっぽけな事だと言わんばかりに。
実際にあゆみたいな女性ってのはまず、いないでしょうね。同じ行為をする人はいても、それは単に感情的な行動に留まるだけ、みたいな。(個人的な意見ですが、おおむね女性ってのはそれが普通だと認識してます。私。)
あゆの場合、それもあったのかもしれないけれど、何よりも孝之の迷いを捨てる事を大前提としている所が好感が持てたりして。
潔いというか、気風がいいというか、もう滅茶苦茶というか、とにかく、ホレボレしますよ。


ただ、欲をいえば遙との間は完全に終わっていなかったのが悔やまれますが。
シナリオ自体が以外によかっただけにそこだけが心残りですね。

なにはともあれ、最後のシーン、孝之は笑って許してあげてください。もとはといえば君がナメクジを付けたからです。




想像しただけで・・・幸せでいっぱいになります・・・ 〜愛美 編〜



愛美たんです。可愛いです。健気です。ほんと、天使のようです。
初めに断っておきますと、純愛エンドの愛美に限定して進めていきますのであしからず。

第1章において、孝之との接点は少なすぎるのですが、いいタイミングで会っているのがポイントじゃないでしょうか。
財布落し事件、荷物運び、保健室。
遭遇はこの3回だけでした。何故孝之に思いを馳せていたのかは結局わからずじまいでしたが、まあそれは置いといて惚れていたのは事実でしょうね。でなければ第二章での言動は辻褄が合いませんから。
秘めた思いを打ち明けないまま、彼女は白陵柊を去ってしまうのですが、たしか、この事実は純愛エンドでは語られていなかったような・・・
バッドエンドは少々(というかかなり)えげつないものがあるので、どうしても引っ越した理由が知りたければ(覚悟の上で)そっちのルートにいっても良いかと。

さて、孝之との再会は遙の入院している病院なんですが、これは全くの偶然でしょうね。
赴任先まではコントロールできないでしょうから。
時期的には遙が目覚めた後、です。が、香月先生や文緒達から、あの頃の孝之の状態は聞き及んでいた事は間違いないです。
で、いざ再会してみると想像よりは健康そうだった、と。しかし、悩む姿は想像以上。ここで積年の思いは一気にヒートアップするのでしょうね。
下品な話になってしまいますが、白陵柊を去ってから今まで、恐らくは男性とのお付き合いはあったのではないでしょうか。
処女ではなさそうだし、病院の屋上での一幕もあったし。ただ、それ程長くは続かなかったのか、孝之の存在が身近に感じられて1人になったのかは定かではないですが(この辺りSSに書くと面白いだろうな・・・)、ともあれ焼け棒くいに火が付いたのは確か。

献身的というか、純粋というか、どこか遙と似通った雰囲気がありますね、彼女。ただ、精神的な脆さは水月以上。一歩まちがえると「マナマナ」になってしまう辺りが彼女の心の脆さを如実に物語っているんではないでしょうか。

孝之が事ある毎にコンタクトしてきたのは、愛美が完全な「第3者」でありながら身近な存在でもあったからなんでしょうね。
彼女からすれば、孝之は遠い憧れの人。
過去の溌剌とした孝之を見続けた故に、今の孝之は見ていられない、放ってはおけない存在になっていたはず。
数々の助言はその表れで、遂には自分から接近してしまう。この事は彼女自身完全に自我のコントロールが緩んできている事に気付いていないんじゃないでしょうか。
孝之のバイト先に現れる、専用の携帯電話を持つ、など。

でも、孝之の心には自分はいない、その事を強く認識する自分がいて、それでも孝之と触れ合っていたい。
その狭間で苦しむ彼女を救う者はいない。
遙と水月の間で苦しむ孝之を除いては・・・
伝えられない想いは何時しか彼女を追い込んでゆく。孝之が彼女に相談を持ちかける回数が増えるにつれ、痛みは増していったのでしょう。
それでも孝之のために、孝之のあの頃の笑顔が見たくて、自分を誤魔化し、慰めている。その辛い時間は、いつしか爆発してしまう起爆剤となって彼女の精神に蓄積されていったのではないでしょうか。

このシナリオでの孝之は、茜シナリオ同様にずいぶん前向きになってますね。
ただ、前向きのベクトルが違っていて、他のシナリオよりも独占欲は倍以上強いですけど。そういった側面を押し出したシナリオですね。
結局は水月、遙とも終わってしまい、特に遙とはさよならも言っていない。

水月の存在が重いと、面と向かって言ってしまえるほど強気。
それは愛美という存在が、第三者から最も身近な女性に変ったから為せる態度でしょう。
それに対して水月も、孝之の存在が重いと返しますが、これはちょっと素直に受け止めることはできませんでしたよ。私は。
水月シナリオから考えるととってもかけ離れた関係になっちゃってますから。
愛美との付き合いを抵抗はあったでしょうが認めた水月。
結局は最後まで水月に全てを委ねてしまっているところは、へたれ孝之の面目躍如といったところでしょうか。

兎に角、献身この上ない振る舞いの愛美。
孝之が笑顔でいられれば、それだけで幸せだなんて・・・・
そんな事を、女性に言わせてはいけませんな。男として。
否、そんな事を言ってもらえるなんて、羨ましすぎ。
たとえそれが、自分を慰めるための口実だとしても、です。


純愛エンド限定といいましたが、ほんとに紙一重だったような気がしますね。
バッドエンドでの壊れたマナマナと孝之ちゃん(苦笑)、純愛エンドでの女神のような愛美と孝之さん(笑)

2人がそれぞれ望む形に落ち着いた未来。形の違いこそあれ、どちらも幸せそうですしね。




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