私は、あなたに出会うために生まれてきた・・・・・・
〜 蛍 編 〜
初めに断っておきます。
勝手ですがこのシナリオは「君望」のアナザーストーリー、つまり外伝とさせてください。
天川さん、悲しすぎです。「もうひとつの可能性の世界」という位置付けにしないと、やり切れません。
勿論、アウトラインには遙の存在があってのことですので一応「君望」ではあるのですが、もはや本編とは切り離したいくらい、別の物語になってます。
はっきり申し上げて、別の物語と割り切りたいくらいです。
いや、天川さん、とても強いです。
いや、強いという表現も適当ではないかもしれませんが、人間的にほんと強いです。
語弊を恐れずに言えば、失うものは何も無いから、と言えるのでしょうが、たとえそうだとしても、あそこまで自分を省みずに他人を第一に考える、なんて事は普通の人間には「絶対に」できない事です。
仮にそうしようと努力はしても、余程の人ではない限り「まず自分ありき」が人間のほんとうの心ですから。
正直にいうと、天川さん、初めは単なるオマケのロリキャラ?みたいな所はありました。
ええ、ありましたよ。成人していて、あの体型は狙ってるんだろ?みたいな。
私が愚かでした。馬鹿でした。懺悔します。いや、させて下さい。
遙エンドで文緒が言った台詞
「生きてりゃいい事もあるよねぇ〜」
この言葉の意味する所を理解したのは、蛍シナリオに入ってからの事でした。
他人を第一に考える理由。
体型の理由。
処女にもかかわらずあっけらかんと「せっくすしましょう。」と孝之を誘った理由。
ああ、そういう事だったのか・・・・・・と(号泣)
自分を犠牲にしてまで、という水月とは違う直向さ。誰かのためにそして自分も、という愛美とも違う慈愛。
やはり、迫りくる自分の死と向き合い、生きている事の素晴らしさ、大切さを実感していた彼女だから、残された時間がない彼女だから、本当に何事も一生懸命だったんですね。
それだけでは無い、たとえ限られた時間でも、幼い日の自分に優しく接してくれた看護婦のようになりたい、という夢があったから。
そんな彼女だからこそ、なんでも経験したい、たくさん経験しておきたいと思って、孝之にも「せっくすしましょう」といったのでしょうが。
でも、わかっていたはずなのに、だめだとわかっていたはずなのに・・・・・・。
このシナリオの孝之はメイン3シナリオに近しいものがあります。
相変わらず優柔不断なのですけれども、いざ蛍シナリオに突入した刹那、茜のとき同様前向きになってます。少なくとも他のサブのシナリオよりは、ですけれども。
自分が抱えている病気、それはもう病気というにはあまりにも酷すぎるものでした。
「不治の病」なのでしょうか、それとも直向、一生懸命ゆえに「不治の病」になってしまったのか。
いずれにしても、それは彼女が選んだ道であった。到底納得はできませんが。孝之も、そして私も。
彼女が孝之と接する時間を持つにつれて、徐々に膨らんできた感情、「好き」という気持ち。
でも、頑なにそれを拒んでいたのはそういう理由があったから。
いずれにしても、知られるわけにはいかない、複雑な、けれども純粋な理由。
では、孝之との出逢いって、いったい何だったのでしょうか。
初めての(といっても、最初で最後ですが)デートをした時にいっていました。
「『好き』だけはだめなんです、『好き』だけは・・・」
確かに孝之にそういう感情を持ったことは事実でしょう。
しかし、それがわかっていながら、最後にデートをしたかった。
それは、経験したい、というよりも、孝之に対して特別な感情を抱いてしまったがため、そして1人の女として無視する事ができない感情の行動だったのでしょう。
「夢を見ていた」
彼女は最後の手紙で言っていました。
たとえ孝之が、遙と別れ、自分を選んだとしても、その時にはもう自分という存在はいない、と悟ったから。
診療所に孝之が現れた時の狼狽は、その夢と、突きつけられた現実との狭間で苦悶する気持ちそのものだったのでしょう。
だから最後まで言わなかった、孝之に対する自分の本当の気持ち。
自分が見てきた、それこそ否が応でもたくさん見てきた残されたものの苦しみと悲しみを、孝之にはさせたくなかったから。
孝之自身も、それはわかっていたはずでしょうが、だからといってじっとしていられるような人間は(特に男は)いないでしょう。それ故、孝之を責めることはできないし、蛍も責めはしなかった。拒絶はしても。
診療所に行ってからの手紙のやり取り、本当に胸が詰まりました。
蛍の死を知らない孝之、愛してますと言えなかった蛍、そして手紙で蛍を演じていた文緒。
結局は蛍の死を知り、とてつもない悲しみに押し潰される孝之ですが、蛍の直向さ、そして強さに教えられて、前向きに進んでいく孝之。
最後の手紙の、本当に最後に書いてあった言葉。
「愛してます」
この時の言葉ほど、本当に愛を感じた事はありません。いつだったか、人は死の淵にあって、そのときに心から湧き出る言葉は真実だと、誰かが言っていました。
遙シナリオの時も思いましたが、形のないものだからこそ言葉でしか表現できないから難しい、と。
でも、この蛍の言葉は、幾千万の同じ言葉よりも胸に突き刺さってきますし、これ以上の表現は無いように思えますね。
故に、孝之が受けた心の傷は、遙の時よりも甚大だったに違いありませんが、皮肉にも蛍がそれを優しく癒してくれたのだと感じました。
お互いに遂げられなかった、繋げられなかった想い。
それが結局は孝之と遙、そしてそれを取り巻く人たちを最良の方向へと進ませたのでしょう。
蛍を失った事実はけして消えない。
でも、蛍は永遠に孝之の心に厳然と存在していくことでしょう。
その後、たとえ遙と再び恋仲になっても、そこには蛍がいる。でも、それでも悩むことなく、苦しむことなく生きていけるのは、蛍がくれた「強さ」によるものなのでしょうね。きっと。
断言します。あのエンディングから、孝之と遙の2人の時間が再び始まったとしても、それは「蛍」という尊い存在があればこそ、2人の絆はより深くなっていける、と。
なんにしても、悲しいエピソードでした。どのシナリオよりも、涙の雫が悲しみを湛えていました。
あえて言います。このシナリオ、やるんじゃなかった・・・。
蛍さん、安らかに・・・・・・
さて、このシナリオには、もうひとつの物語が隠されています。
星野文緒。
彼女にはバッドエンドしか存在していませんでしたね。まあ、あゆシナリオもそうなんですが。
蛍の墓前で、孝之と文緒、2人が命日の日に会う。
これは、(かなり穿った見方ですが)2人が“蛍”というかけがえのない存在を「共有」している事を意味している(と思われる)。 この先孝之が医者になったとして、はたして2人は・・・・・
いや、そういう可能性もありえるとのエンディングでしたが、そのエピソードはプレイヤーに委ねられているのでしょうかね。 シナリオライターの意図は判りかねますけど、私にはそう感じました。
蛍の生きてきた意味、孝之も文緒も同じ様に感じている、と・・・・。
さて、最後に「まゆまゆ」なんですが・・・・・・
申し訳ない。私には書けません。
いや、まゆまゆ自体が嫌いなわけではないし、まゆまゆの置かれた環境や、過去の事についてはそれこそ感慨深いものがあります。
ただし、それは他のシナリオの中での事。
ことまゆまゆシナリオでは、それを全部孝之あ〜んど水月がぶちこわしていますので。
このシナリオでは、なんとなく全てのキャストが、なんかいや〜な雰囲気を醸し出していますし。
たしかにまゆ、かわいそうです。同情します。
でも、このシナリオはそこの部分のみが救われる要素で、他は全て納得できないので
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